1997年の初演から12年を経て、2009年9月16日に再びウィーンに登場したTanz der Vampire。チケットの売れ行きも良さそうで、初演時のフィーバー再来といったところでしょうか。
初日を数日後に控えた出演者達に、Kurier紙が行ったインタビューをご紹介しましょう。既にHamburg(ハンブルク)とBerlin(ベルリン)でGraf Krolockを演じた経験があるThomas Borchertへの質問から始まります。
記者:ウィーンでの公演は、先の二つの都市での公演と違いますか?
Thomas:ええ。ハンガリー出身の美術監督Kentaurが新しい衣裳と背景を担当し、独自のヴァンパイアの世界を創り出しています。既に何度もこの作品を演じている我々を、非常にわくわくさせてくれて、まるで世界初演のような気持ちです。
記者:(Marjan Shakiに向かって)8年前にStuttgart(シュトゥットガルト)でSarahを演じていますね。
Marjan:当時はまだ駆け出しで、非常に若かったものです。年齢を重ねた今、少女の役を演じるに当たっては、やり過ぎにならないように、感情を出来るだけ爆発させないようにしています。
記者:ですがあなたにとっては、この役は目をつむっても出来るのではないですか?
Marjan:そんなことはありません。違う公演ですし、舞台背景も衣裳も変わっています。
記者:ポスターに「ウィーン新バージョン」とある通りですか?
Thomas:そうです。決して以前の公演の焼き直しではなく、敢えて言うなら我々は世界中のTdVでの経験を一つにまとめたのです。
記者:声への要求は、例えばJekyll & Hydeで経験したのと同じくらい高い水準にありますか(注:Thomasは、Theater an der WienのJ&Hで主演を務めていました)?
Thomas:Krolock役において要求されることは、J&Hでのそれとは別物です。J&Hでは舞台上に出ずっぱりで、途中でトイレに行くことも出来ません。
記者:ではJ&Hの方が大変ですか?
Thomas:確かにより大変ではありますが、より易しいとも言えます。というのは、休憩がないので、幕が下りるまで役の中に留まっていられるからです。Krolockの場合は、何もすることのない長い休憩が途中にあります。にも関わらず、エネルギーを同じレベルで保ち続け、次の出番になると再び100%の力を発揮しないといけないのが大変です。そういう意味では、Das Phantom der Oper(オペラ座の怪人)も同様に難しい役です。
記者:声のために何かしていることはありますか?
Thomas:ただ歌うだけです。それが声には非常に良いのです。会話はどちらかというと危険です。喋りすぎると、歌わないといけない時に、問題が生じます。オペラ歌手も出番の前には話をしません。
記者:12年前の初演と比べて変わったことは何ですか?
Gernot Kranner:躍動感と勢いが出ました。作中のテンポもより速くなりましたし、場面の流れも全体的にリズム良くなりました。実にスピーディーで、今の時代に即した公演になったと思います。当時よりも弾けていますね。
記者:メイクには非常に労力がかかっていますね。変身には1時間半近くかかっています。大変な過程ですか?
Borchert:確かにとても手がかかります。両手もつけ爪までして完全にメイクします。メイクが上演中保つように、他にも様々な仕掛けが施されます。
記者:「おまえ達、明日には死すべき運命の者に、今日ここで予言しよう。次の世紀が始まる前に、全ての者が仕えるべき唯一の神は、抑えがたき欲望なのだと」とKrolockは予言者のごとく歌い上げます。Krolockは夢のような役ですか?
Borchert:Krolockを演じることは、本当に信じられないほど多くの喜びをもたらしてくれます。バリトンの声域は私に合っていますし、この”Die unstillbare Gier”(抑えがたき欲望)は、勿論どんな歌い手や演者にとっても祝祭的な歌といえます。
記者:あなたにとって上手くいった公演とはどういうものですか?
Marjan:音楽的な流れや技術的な進行が全て上手くいき、自身の仕事に満足できて、一つも音を外さなかったときです。そしてとりわけ、火花が飛び移ったときです。つまり、観客と一緒に、真に素晴らしい晩を過ごしたという思いを抱いたときです。
記者:あなたは最も長い間、舞台上にいますね?
Lukas Perman:ええ、3時間の公演時間中ほぼずっとですね。私は全ての場面で教授と一緒に、また多くの場面でSarahと共に舞台に立っています。それから幾つかの場面には一人で出ています。
記者:Alfredは、苦労が多い割に得るところの少ない役柄だとは思いませんか?
Lukas:私はそうは思いません。彼は最初から最後まで一生懸命です。美しく着飾っているKrolockとは反対に、汗だくになる青年です。しかしこの作品において魅力的な人物は、勿論この吸血鬼の長です。ただAlfredは最初から最後まで、非常に様々な面を見せてくれるキャラクターなのです。
記者:ということは、俳優にとっては興味深い役だということですか?
Lukas:Alfredは様々な世界を渡り歩きます。最初、彼はシャイな若者ですが、多くを見て成長を遂げます。そういう意味での成長は、Krolockにはありません。そしてThomas Borchertは成長してAlfredになることはもうありませんが、私には成長していつかKrolockに達する楽しみがあるのは嬉しいことです。
記者:AlfredはKrolockよりも多くの10代のファンを獲得すると思いますか?
Lukas:アンサンブルの一人がこう言っていました。「最後には単純に皆がAlfredを愛するようになる、というのは彼はゲームにおける敗者だから」。彼はいつも教授にやられっぱなしだし、Sarahは彼の求愛に応えてくれない。そんなAlfredは観客に同情を呼び起こします。ですがミュージカルには、それぞれの観客にとって愛すべきキャラクターというのものが存在してるのです。
記者:12年の時を経て、新たにProfessor Abronsiusに出会うことになり、どういう思いがありますか?
Gernot:今再び原点に立ち戻って見直すことや、当時どうだったか、あのときのものがまだ残っているのか、何が不要なのかと問うことは、わくわくする作業です。メイクは(年齢を重ねたため)当時よりもずっと早く出来るようになりました。声もしわがれて年齢を感じさせるようになりました。そして当時よりも遙かにうわべを装うことが少なくなりました。
記者:それは、本当のGernot Krannerは少なくとも教授と同じ程度には風変わりだということですか?
Gernot:白状すると、教授像は自分や自分の家族から造り出したのです。というのも、ああいう感じの人達を知っていたからです。自分のそう遠くない未来の姿も加味しています。私は教授ではありませんが、劇場の守衛はもう「ああ、教授先生が来られた」と言っています。
記者:教授がロープ一本で、天地の間に宙づりになる場面がありましたよね?
Gernot:はい。あれは拷問ですね。苦痛ですよ。あの5分間の後は、実に力を使い果たします。両足の間でぶら下がるだけでなく、胸郭も強く締め付けられるのです。それに私は小さな鉤に支えられているだけで、Lukasが再び引っ張り上げてくれることを信じるしかないのです。最後にはいつも、この場面が過ぎたことを喜んでいます。
記者:新しいフィナーレもあるのですよね?
Gernot:聞くところによるとそうらしいですね。私はそれを無に帰そうと試みています。私はこのショーにおける希望ですから。そして善の勝利のために、力を尽くして闘っているのです。
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