第2幕の粗筋に入る前に、オーケストラについて。Theater St. Gallenの広いオーケストラピットには、総勢30名の演奏者が集っています。グランドピアノまであったのにはびっくり! 迫力あるオーケストラによる厚みのある音が、壮大なドラマを盛り上げています。
Karneval in Rom [Reprise Tarantella] (ローマのカーニバル:Ensemble)
友人とローマのカーニバルにやって来たAlbert Mondego(Daniel Berini)。誘うように逃げる可愛い女の子を追って、友人とはぐれて一人になってしまったAlbertは、怪しい男達に捕まってしまいます。
Ah, Frauen (ああ、女性達よ:Edmond、Albert)
舞台中央のセットの柱に縛られた二人の男性。観客から見て右側がAlbert、左側には長身の黒衣の紳士。Albertと同じく賊に誘拐されたという紳士は、我らがDer Graf von Monte Christo(Thomas Borchert)。歌に入るまでのAlbertとMonte Christoの会話の内容は上手く聞き取れなかったので、どういう流れで”Ah, Frauen”につながるかは、今ひとつよく分かりませんでした。恐らくAlbertが女の色香に惑わされた結果、誘拐団の手に落ちたことと、続く歌の内容から婚約者のValentine von Villefort(Barbara Obermeier)のことを伯爵に説明していたはず。
“Ah, Frauen”は二人が柱に縛り付けられた状態で歌っています。「女というものは謎や夢に満ちている」と始まり、「星に満ちた瞳はダイヤモンドのように燦めいている」、「絹のように柔らかな肌、唇には蜂蜜のように甘い微笑みが」等の歯が浮くような内容を、うっとりした顔つきでそれぞれが歌い上げています。CDで聴いたときには綺麗なデュエットだと思っていたのですが、にやけたThomas(Monte Christoというより、ユーモラスなThomas Borchertの顔でした)と世間知らずのお坊ちゃんのAlbertが遠い目をして歌っている実際の情景を目にすると、笑いがこみ上げてきてしまいました(^_^;)。
歌が終わった後、後ろ手に縛られていたMonte Christoがやおらもぞもぞすると、ロープがぱらりと落ちます。Albertの縄もほどいたところに、黒い帽子に黒いマント姿の誘拐犯一味が数名、長剣を持って襲いかかってきます。華麗な剣捌きで応戦するMonte Christoは、「ここは私に任せろ! 後から行くから!」と、Albertを地下通路に逃がします。通路の蓋が閉まった途端、剣を下ろす伯爵と誘拐犯達。Albertを誘拐した一味は、女海賊Luisa Vampaとその手下達でした。「上手くいったな」とお互いを労っていると、逃げたはずのAlbertがそっと蓋を持ち上げて顔を出そうとします。それに気づいた瞬間、蓋の上に両足でぴょんと飛び乗って閉めてしまうMonte Christo。その後の何事もなかったかのような涼しげな顔が、これまたThomasらしく笑えます(^_^;)。
賊の下から逃げおおせたAlbertは、ほどなくMonte Christoと再会します。何も知らないAlbertは、命の恩人の伯爵に感謝の意を表します。まんまとAlbertに近づくことに成功したMonte Christo。
So wie man hört (噂によると:Ensemble)
パリのMonte Christoの屋敷で開かれたパーティーには、社交界から大勢の客が訪れています。謎に包まれた大金持ちの伯爵に、皆興味津々です。広間の中央には、最後の審判を思わせるモチーフを描いた巨大な油絵がかけられています。その絵に巨大な人影が長く映ったかと思うと、次の瞬間広間の中央に、真っ赤なロングコートを身に纏ったMonte Christoが姿を現します。その神秘的な登場に、息をのむ人々。
招待客が次々と伯爵に挨拶していきます。その中には宿敵Danglars、Villefort、そしてMondegoとその妻になったMercédèsの姿がありました。かつてのEdmondを知る者は、Monte Christoの正体に全く気がつきません。ただ一人Mercédèsを除いて。
Diese Augen / Der Mann ist tot (あの瞳は / あの男は死んだ:Mercédès、Edmond)
Monte Christoの顔を見た途端、驚愕するMercédès。「神よ、私の心臓は早鐘のように鳴り、理性はそうかもしれない、彼が帰ってきたのかもしれないと絶望的に訴えている!」Mercédèsの真っ赤なドレスと、Monte Christoの深紅色のコートが、他のパーティー客の淡い色の衣裳と対照的に、二人だけの空間を作り出しています。しかしMonte Christoの顔からは、かつての若さと優しさは失われてしまっています。「あの男は死んだ。毎日少しずつ、監獄島Chateau d’If(シャトーディフ)の地下深く、かび臭い棺の中で」と冷たく歌うMonte Christo。自分は古い彼の絵からよみがえった亡霊、昔の自分はもう残ってはいない、だが今でも自分を締め付ける痛みがある…」
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