Der Kultur-ChannelでNandinda著”Draußen ist Freiheit“(外は自由)という本が紹介されていました。Tanz der Vampireでお馴染みの曲と同タイトルのこの本は、ペンネームで発表されていますが、内容はドイツの政治学者であり、出版社を経営するBjörn Pätzold氏の自伝です。実はこの方、TDVでSarahを演じているMarjan Shakiのお父さんだそう。
第二次世界大戦終結の前年である1944年に生まれたPätzold氏は、戦争末期、ソ連軍から逃れて家族と共に移り住んだBerlin(ベルリン)で、少年時代を過ごします。1961年にベルリンの壁が建設され、一家は旧西独のNiedersachsen(ニーダーザクセン州、州都Hannover)に移住しました。高校卒業後アフリカに渡った彼は、ナミビアで新聞編集者として働いた後、コンゴ市民戦争に傭兵として従軍する等、波乱の人生を歩んでいます。
この本の600ページ目に、Marjanが出演するTDVを夫婦で見た時の様子が描かれています(2009年8月出版なので、WienではなくStuttgart公演のことだと思われます)。20歳で故郷を離れ、舞台人生を始めた自分達の娘Marjanが演じるのは、宿屋の娘Sarah。赤いショールで身を覆い、両親の家を離れ、自由を求めて見知らぬ世界へと踏み出す勇気を不安と期待に満ちた声で歌う娘の姿を見て、二人は涙を抑えることが出来なかったそうです。
イラン出身のMarjanの母親も、Marjanと変わらない年頃に、自由を求めてアジアから欧州に移り住んだことや、Pätzold氏自身も20歳の頃、祖国で見つけられなかった自由を求めてアフリカに渡ったこと、しかし結局二人とも移住先で自由というものを見つけられなかったことに思いを馳せるPätzold氏は、「外は自由だって?」と懐疑的に言いつつも、娘が演じた数々のヒロイン達の名前(Sarah、Rosanna、Mistress、Julia、Helene)を呼び、「恐らくお前は外で自由を見つけることだろう!」と締めくくっています。
次にMarjanが歌う”Draußen ist Freiheit”を聞くときは、きっとこのエピソードを思い出すことでしょう。
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