『ロミオとジュリエット』はフランス発のミュージカルですが、日本のミュージカルファンの間では、ウィーン版で主役コンビを演じたMarjan ShakiとLukas Permanが来日コンサートで紹介した印象が強いことでしょう。日本での上演が待ち望まれていたこの作品が、2010年7月10日に宝塚歌劇団星組により幕を開けました。
ウィーンで2回観た『ロミオとジュリエット』(ドイツ語タイトルは”Romeo & Julia”)のロック調な音楽とアクロバティックで力強いダンスを宝塚でどう表現するのか、正直ちょっと不安もありましたが、梅田芸術劇場での初日は大変素晴らしく、宝塚の底力に感服しました! 衣装はウィーン版と同様にモンタギュー家が青、キャピュレット家が赤系でまとめられていました。それぞれの色の中で更に緑がかったり紫がかったりと色彩がバリエーションに富んでいて、舞台がとても華やかに見えました。舞踏会の場面は敵も味方も全て白というのも、ウィーン版と同じ。ジュリエットのドレスがミニでしたが、ちょっとメイド喫茶っぽい気がしたので(笑)、個人的にはロングの方が良かったと思いました。有村淳さんの衣装デザインは、非常にモダンでお洒落で、衣装写真集が欲しいくらい気に入りました。舞台装置も石造りの建物の質感がよく出ていて、中世イタリアの雰囲気が伝わってきました。時々天井から下りてきたキャンドルライトも素敵でした。ライティングも『憎しみ』をモンタギュー、キャピュレットの両夫人が歌う場面で、それぞれのソロの際にスポットライトを切り替えて当てていたところなど、非常に効果的だったと思いました。
ロミオ役の柚希礼音さんは、中性的な魅力を醸し出していました。若さの持つ危うさや一途さが伝わるロミオでした。ヴェローナの娘さん達が熱を上げた気持ちが分かります(笑)。青い衣装のデザインがとても凝っていて格好いい! ジュリエット役の夢咲ねねさんは可愛いお嬢さんという感じ。やや歌が弱かった気がしましたが、ビジュアルはぴったり。水輝涼さんのヴェローナ大公は、ウィーンでこの役をやっていたBoris Pfeiferの独特の声が好きだったので、ついつい比較してしまい、もう一つ物足りなさを覚えてしまいました。オリジナルが男声なので、音域的に難しいとは思いますが、公演を重ねていけばきっと変わってくるでしょう。ティボルトの鳳稀かなめさんも同様に、まだ歌がこなれていないように感じましたが、ワイルドな雰囲気は役柄に相応しいので、是非頑張って欲しいです。ベンヴォーリオの涼紫央さんは、青のモンタギュー家の中にあって黒っぽい衣装だったのと、プラチナブロンドの短髪が、Essen版TodをやっていたときのUwe Krögerのようでした。マーキューシオ役の紅ゆずるさん、ロミオの腕の中で最期を迎える場面は、親友と言うよりも「もしかしてロミオのことが好きだったの!?」と思わせられる妖しさがありました(笑)。ウィーン版の時もちょっと感じたので、これは意図的なものなのでしょうか!?
歌が素晴らしかったのは、モンタギュー夫人の花愛瑞穂さんとキャピュレット夫人の音花ゆりさん。宝塚にこれだけ力強く歌える人がいたとは、思いがけない発見でした。乳母の白華れみさんも歌・演技とも良かったです。ウィーンでは恰幅のいいCarin Filipcicがやっていた役を、スマートなタカラジェンヌで観ると、印象が大分違います(笑)。
ダンスも皆さん非常に頑張っていました。やはり女性同士で踊ると、リフトのような力業を多用するわけにいかないので、ダンスに高さが出ないことと、時々あった全員同じ振付で踊る場面にやや面白みが欠けていたのは残念でしたが、ハードな振付をこなす力にはこれまた感服しました。この内容を1日2回公演するとは、凄いことです!
題材的に宝塚に向いている内容だけあって、演出の小池修一郎さんの腕が存分に振るわれていました。個人的には『エリザベート』や『モーツァルト!』の演出はあまり好みではないのですが、『スカーレット・ピンパーネル』と今回の『ロミオとジュリエット』は、さすが長年宝塚で仕事をされているだけあって、女性客の心を掴む術をよく分かっておられるなあと感服しました。ウィーン版には登場しない「死」のダンサーに対し、相手役として「愛」を配置して、ロミオとジュリエットの心象風景を描き出した演出が特に印象的でした。また「綺麗は汚い、汚いは綺麗」(マクベス)等、シェイクスピアの言葉が歌詞や台詞に取り入れられていたのも良かったです。
舞台が進行するにつれ、拍手の音がどんどん大きくなっていき、観客が引き込まれている様子が伝わってきました。ロミオの服毒からジュリエットが自身を短剣で一突きするクライマックスシーンでは、周りでハンカチを取り出す人続出。幕が下りた後は、文字通り割れんばかりの拍手となりました。
ラストにロミオとジュリエットのダンスが入ったのは、宝塚ならでは。フィナーレは大劇場公演のように、背中に羽根を背負って現れるのだろうかと危惧しておりましたが、それはありませんでした。そういう意味では宝塚大劇場でなく、梅芸でやったのは正解だったと思いました。普段宝塚とはあまり縁のない私のような人間が抱いている、大階段や羽根飾り、すみれの花に清く正しく美しくといった、如何にもな宝塚イメージに安住するのではなく、高いハードルを越えていい作品を創り出そうとする挑戦心を感じました。
カーテンコールには、小池さんとオリジナル版作詞・作曲・演出家のGerárd Presgurvic(ジェラール・プレスギュルヴィック)氏が登場しました。Presgurvic氏は「感謝したい人が二人いる。一人は小池さん、もう一人ここにいない人、シェイクスピア」と述べていました。また「フランスのキャストは自分達が世界一だと思っているだろうけれど、宝塚の出演者達はそれに劣らないことを彼らに伝えたい」とも仰っていました。宝塚なのであっさり終わるのかと思っていましたが、鳴りやまぬ拍手に再び幕が開きました。出演者達が下手を見やって小池さんやPresgurvic氏が出てくるのを待っていましたが、なかなか登場しないので、柚希さんが飛ぶように走って二人を舞台上に連れ出していました。最後は客席総立ち! 宝塚でここまで熱い客席になるとは思っていなかったので、嬉しい驚きでした。
『ロミオとジュリエット』は間違いなく宝塚の代表作になりますよ! 今回は大阪と博多のみの公演ですが、この勢いなら東京公演は実現間近だと思いました。今回は残念ながら初日のみの観劇でしたが、再演があればまた観たいです!
『ロミオとジュリエット』は間違いなく宝塚の代表作になる、とのSpaさんの絶賛コメントに、ものすごーく見てみたくなりました!
有村淳さんの衣装は、私も昔から、センスがしゃれててカッコいいなあ~と、好きでした。
monteさん、久々のコメントありがとうございます。
『ロミオとジュリエット』のチケット、予想通りオケピで人気沸騰中です。機会があれば是非観て下さい。正直ウィーン版よりグッときました。宝塚マジックでしょうか(笑)。
有村さんの衣装は細部まで凝っていて、ゴージャス感がありました。一昔前の宝塚のイメージは、ありきたりなピンクやブルーといったお姫様チックなドレスだったんですが(宝塚ファンの方々、すみません!)、今や全くイメージが変わりました。
題材としては宝塚のイメージに合うだろうなぁと勝手に思っていたのですが。そうですか、グッとくる作品になっていたのですね!私もSpaさんのレポートを拝見して見に行きたくなりました~。
是非、東日本でも上演してくれることを希望します☆
spaさん、こんばんわ!
10月に韓国でのミュージカル「宮!」も虎視眈々と狙っている今日この頃ではありますが、その前に結局「ロミジュリ」を観にいくことにしてしまいました。大阪は遠征できなかったので、博多座です。来月近辺の旅行をかねて、「初!博多座」への遠征になります。そして演目としては「初!「ロミオとジュリエット」」になります。音楽はウィーン版CDを結構聴きこみ、DVDはフランス版を持っていますが、実際目の前に繰り広げられる世界はspaさんのブログや感想などを拝見して、ぐっと背中を押してもらった感もあり、ぐぐっと楽しみになりました。見てきましたら、拙いながらも私なりの感想をコメントしますね!
りでさん、今晩は。旅に出ていたのでコメントが遅くなり、申し訳ありませんでした。
再演確実と思ってはいましたが、あっという間に発表されてびっくりです。今度は雪組が宝塚大劇場で2011年1月1日~2011年1月31日、東京宝塚劇場で2011年2月17日~3月20日に公演するそうです。ご覧になったら、是非感想を教えて下さいね。
シフォンさん、今晩は。コメントを頂いた頃は、丁度トゥルクからヘルシンキに向かう列車の中でした。そういうわけで、今更ながらのレスですみません!
ジュンスの成功を受けて、東方神起の他のメンバーもミュージカル界への進出を決めたのでしょうか。MOZART!と同様、チケット争奪戦が激しそうですね。
ロミジュリのフランス版DVDは未見なのですが、各国版によって曲が異なったり、衣装等の印象が違うと聞いています。宝塚版ならではのアレンジを楽しんで来て下さい。博多座レポート、楽しみにお待ちしております!