3 Musketiere観劇記 Part 3(2010年7月)

Tecklenburg版”3 Musketiere”観劇記の続きです。Part 1及びPart 2、Freilichtbühne Tecklenburgの公式サイトの舞台写真も併せてご覧下さい。なおネタバレがあるのでご注意下さい。

5. Oh Herr(おお、神よ)

舞台中央の2階建てのセットの中央、2階部分に設けられたバルコニーに、真っ赤な僧服を身に纏ったRichelieu(リシュリュー枢機卿、Yngve Gasoy-Romdal)が姿を現します。黒服の僧侶達を従えた枢機卿は、自分は神から選ばれ、この国を統治する立場になったこと、国王には英知が欠けており、自分に頼り切っていること、神の王国を実現するためであれば、どんなことでもする等、厳かに歌い上げます。

国王ルイ13世(Lars Kemter)とアンヌ王妃(Wietske van Tongeren)に、ユグノー教徒を支援する英国が戦争を起こそうとしていると進言する枢機卿。国王は枢機卿に判断を任せます。国王がその場を去った後、王妃に二人だけで話したいことがあると言うRichelieu。王妃は傍にいた侍女Constance(Lisa Antoni)を下がらせます。Richelieuはスペイン出身の王妃が結婚前に英国宰相Buckingham(バッキンガム公、Harald Tauber)と恋愛関係にあったことを知っており、王妃を通じてBuckinghamをフランスに呼び寄せることを画策します。王妃に対しては、英国との和平のためにと言うRichelieuですが、本当の目的は別のところにありました。

6. Vater(お父さん)

三人の男達(Athos、Porthos、Aramis)と決闘の約束をしたD’Artagnan(Thomas Hohler)が、Luxembourgのカルメル会修道院の裏に現れます。彼の手には父親の死を告げる母親からの手紙が握られていました。D’Artagnanが出発して数日後に父親の容態が悪化し、帰らぬ人となっていたのでした。目標としていた父を失った悲しみに、声を震わせるD’Artagnan。夏の日に二人で野原に寝そべっていたとき、父が突然跳ね起きて「息子よ、私を捕まえてみろ!」と追っかけっこをしたこと、夏の日差しの中、自分の前に立った父親が偉大で強く見えたこと、その姿に憧れたこと等、思い出が走馬燈のように駆けめぐります。

そこへ最初に約束したAthos(Marc Clear)が登場します。早速手合わせをしようとした二人ですが、剣を持ったAthosがうめき声を上げて肩を押さえます。「怪我しているのですか!?」と驚くD’Artagnan。「決闘は別の日にしましょうか? そうだ、母さんが持たせてくれた、何にでも効く膏薬がありますよ!」と敵に塩を送ろうとするD’Artagnanの台詞に、観客席からクスクスと笑いが起こっていました(笑)。彼の申し出を断り、仕切り直そうとしたAthosの動きを「ちょっと待った!」と野太い声が遮ります。声の主はD’Artagnanにかじりかけのパンを飛ばされた第二の男Porthos(Enrico de Pieri)。その傍らにはハンカチを拾われた第三の男Aramis(Jens Janke)もいます。三人は「何でお前がここに?」といった様子でひとしきり話していましたが、とりあえず決闘の続きをやることにし、AthosがD’Artagnanに相対します。

剣を交わそうとしたまさにそのとき、「決闘は禁止されているぞ!」と枢機卿の片腕である独眼の剣士Rochefort(Paul Stampehl)が、部下達と共に現れます。三人の決闘相手達とRochefortとのやりとりを聞いて、彼らが銃士隊隊員であることを知るD’Artagnan。「僕は銃士になるためにパリに来たんです!」と喜び勇んで三人に話しかけますが、Rochefortには「消えろ!」と歯牙にもかけられません。Rochefortの号令の下、三銃士に襲いかかる枢機卿護衛隊。激しい戦闘が始まります。たった三人で大勢の敵と戦う様子に居ても立ってもいられなくなったD’Artagnanは、「俺が4人目だ!」と戦いの中に飛び込みます。最初にRochefort達にぶちのめされた無様さは何処へやら、敵の間を縦横無尽に駆け回り、剣を振るうD’Artagnan。戦いの途中、三銃士と剣を掲げて「一人は皆のために、皆は一人のために!」と宣言する時もぴったりと息が合っています。

この戦闘場面では、三銃士のそれぞれとD’Artagnanに見せ場があり、各人の勝負所では、他の人間は周囲で剣を振りかざしたまま、止めポーズに入っていました。勇壮な音楽に乗せて華麗な剣技が披露されたこの場面、一人一人がフェンシングの選手かと思うほど決まっていて、非常に見応えがありました。勿論最後は観客大喝采!!

D’Artagnanの活躍により、負傷者続出の護衛隊は、形勢不利と見て退却していきました。D’Artagnanをすっかり気に入った三銃士は、彼の名前を聞き、自分達が尊敬する大先輩の息子だと知ります。D’Artagnanは、父親がRochefortから片眼を奪い、そのせいで銃士隊を追われることになったことや、Richelieuと枢機卿護衛隊が国王をないがしろにしていることを聞かされます。三銃士はD’ArtagnanにそれぞれAthos、Porthos、Aramisと名乗ります。

場面は変わって宮廷。これから国王のスピーチが始まるところです。Richelieuは国王に、王妃とBuckinghamが怪しい等、あることないことを吹き込みます。「結婚前のことだ」と王妃をかばう様子を見せる国王ですが、Richelieuに対しては強く出られません。

国王夫妻と枢機卿の前に、銃士隊と護衛隊がそれぞれ整列します。と、護衛隊の中から声を上げる者が。Rochefortが枢機卿に、「銃士隊の隊員が、禁止されている決闘を行っていました」と告げ口します。銃士隊を苦々しく思っているRichelieuは、当事者を罰したいところですが、国王の臣下である銃士隊と自分の部下達が揉めるのは体裁が良くないため、直ちに厳罰に処すというわけにはいきません。そこへ「先に手を出したのはあいつだ!」と叫ぶ声が。舞台上手の城門跡の上に集っている民衆の中からその声を上げたのは、恐いもの知らずのD’Artagnan。しかもわざわざ下りてきて、Richelieuに向かって「やったのはあいつだ!」とまるでいじめっ子を告発するかのような口ぶり(笑)。Richelieuに名前を聞かれると、物怖じすることなく「D’Artagnanだ!」と答えます。結局銃士隊はお咎めを受けず、その場は何とか収まります。

このときD’Artagnanの目に、バルコニーに立つ王妃の背後に控える女性の姿が映ります。パリに着いたときに一目惚れしたあの金髪の女性だと気がついたD’Artagnan、ぼ~っと見とれていますが、声をかけることが出来ないまま、Porthosに「ほい、お辞儀!」と無理矢理頭を下げさせられ、彼に引っ張られるがまま、銃士隊の後に続いて退出していきます。

7. Männer(男達)

Richelieuの部屋にMilady(Femke Soetenga)が姿を現します。自分の命に背きパリへやって来たMiladyに、最初は不機嫌な顔を見せる枢機卿ですが、彼女がパリにBuckinghamが来ていると告げると、一転して公爵の居所を教えるよう迫ります。

この場面、RichelieuとMiladyの激しいやりとりが聞き取りづらく、かなり脳内推理をしながら状況理解に努めることになりました。大いなる勘違いがあるかもしれませんが、私の理解では、15歳の時、修道院で乱暴されたMiladyは、自分の意志でなかったにもかかわらず、逆に修道士を誘惑した罪で肩に百合の烙印を押され、フランスを追放されてしまったようです。Miladyは、Richelieuの力で自分の名誉を回復することを望んでいます。Richelieuは当時Miladyが罰を受けた場に居合わせたようで、彼女の過去の話はRichelieuにとってもバラされてはまずいことらしく、Miladyが誰かに話したかどうかを、凄い勢いで詰問していました。Richelieuがこれほどやっきになるのは、聖職者である自分自身の中にも、欲望に負けそうな部分があることを自覚しているからのように見えました。Miladyを羽交い締めにして膝をつき、彼女の肩をむき出して百合の烙印を露わにした後、Richelieuの手が彼女の下半身に伸びかけますが、その衝動を振り払うかのように、女のせいで人間はエデンの園から追放されたと吐き捨てます。そんなRichelieuに対し、Miladyは女から生まれない人間はいないと言い返します。

Richelieuが立ち去った後、この会話の流れを受けてMiladyの”Männer”(男達)が始まります。「男達は女を娼婦か聖女としてしか見ていない。男達は威張っているけれど、いつかその論法を逆手に取ってやるわ」と、タンゴ調のメロディーに乗せてドスの効いた声で歌うMiladyの背後から、黒服の男達がわらわらと出てきます。「男達に苦しめられ、蔑まれてきた自分ではあるけれども、それに屈したりはしない。自分の身体を武器に、兵士だろうと枢機卿だろうと関係なく手玉に取ってやる」と、男達を従えつつ、挑発的に歌い上げます。女の怨念がこもったこのナンバー、観客席の男性陣はどう思ったのか聞いてみたい気がします(笑)。CDではイントロはスローテンポで静かに始まっていましたが、Tecklenburg版では最初からアップテンポ。映画007シリーズのオープニングのような雰囲気で、格好いいナンバーに、目も耳も舞台に釘付け! 客席の歓声と拍手も一際熱いものでした。

王宮では王妃が侍女のConstanceに、パリに潜伏しているBuckinghamを秘密裏に連れてくるよう命じます。どうも王妃は未だBuckinghamに未練があるようです。

8. Engel aus Kristall(クリスタルの天使)

すっかり意気投合した三銃士とD’Artagnanは、居酒屋で楽しい時間を過ごしています。D’Artagnanは、王宮で王妃の横に立っていた女性の話に夢中。話に乗ってこないAthosに、「恋をしたことはあるの?」と尋ねます。「ない」と答えたAthosは、ある友人の話を始めます。「その男はある素晴らしい女性と恋に落ち、彼女のことをクリスタルの天使と呼んでいた。彼女からはラベンダーの香りがした・・・」とうっとりと語るAthos。「やがて二人は結婚したが、恥ずかしがり屋の彼女は、夜は明かりをつけないでほしいと彼に頼んだ。しかしある晩、眠っている彼女の身体を月の光が照らしたとき、彼は見てしまったのだ。彼女の肩に、百合の形の烙印があることを・・・!」。彼女が罪人であることを知った男は、彼女を追い出してしまったと語るAthos。一同は彼の口調から、その物語がAthos自身の過去であることを知ってしまいます。

「何処に逃げても彼女の姿が日々新たに浮かんで離れない。その面影はクリスタルのようにはっきりしている。あれほど大きな愛から、何故こんな憎しみが生まれてしまったのか! どんなに努力しても彼女を忘れられない。どんな言葉も、どんな考えも、彼女の思い出につながってしまう!」。淡々とリズムを刻むように始まるAthosのソロ”Engel aus Kristall”は、彼の気持ちと共に次第に高揚し、彼女への思いをどうしても断ち切れないAthosの苦しみが、絶叫となってこだまします。クリスタルの天使は粉々に砕け散り、その破片は彼の心に深く突き刺さったまま、彼を日々苛んでいるのです。Athosが未だ彼女を愛していることに気づいたD’Artagnanでしたが、Athosはそれ以上語ろうとはしませんでした。

9. Constance(コンスタンス)

「それより彼女のことを教えろよ!」と話題をD’Artagnanに向けるPorthosとAramis。「名前は?」と聞かれるも、「分からないんだよ~」としか答えられないD’Artagnan。目を閉じて彼女が如何に素敵だったかを語り始めます。すると舞台下手から例の彼女が登場! 全く気づいていないD’Artagnanは、彼女を褒め称える言葉を並べ立てます。そこで”D’Artagnan!”と声をかけられてびっくり。目を開けて彼女の姿を見た途端、「君、名前は!?」と勢いよく尋ねます(笑)。”Constance”(ドイツ語ではコンスタンセと発音していましたが、カタカナ表記の場合は東宝版の表記に合わせてコンスタンスとしておきます)と教えてもらうと、早速彼女の名前をリピートし、一人夢の世界にトリップしてしまうD’Artagnan(ConstanceがD’Artagnanの名前を知っていたのは、王宮で枢機卿に名前を尋ねられたのを聞いていたからですね)。続いて彼女に話しかけようとして言葉に詰まると、PorthosとAramisが助け船を出してくれます。Constanceの発音と韻を踏んで、Chance(ションセ)等末尾が「セ」の発音で終わる単語を幾つか耳打ちしていたのは分かったのですが、最後のPorthosの台詞が分からず、観客が大爆笑したのにはついていけませんでした。D’Artagnanが慌てて打ち消していたので、恐らく上品なご婦人には言ってはいけない系のストレートな求愛の言葉だったのだろうと想像しております(笑)。

どうやらBuckinghamはD’Artagnan達がいた居酒屋に潜伏していたらしく(あるいはホテルを兼ねた店だったのかも?)、Constanceは公爵を迎えに来たためにD’Artagnanと再会することになったようでした。

公爵とConstanceが立ち去った後、その場に残ったBuckinghamの執事James(Stefan Poslovski)は、公爵は王妃に会いに行くと口を滑らせてしまいます。国家機密を漏らしてしまった!と大慌てするJamesですが、D’Artagnanにとっては、Constanceの名前を知ることが出来たことの方がよっぽど大事(笑)。うきうきしてConstance礼賛ソングを歌い始めるD’Artagnan。「彼女の名前が分かった! 僕の頭の中を、彼女の名前が流星群のようにぐるぐる駆けめぐっている!」と派手に盛り上がります。居酒屋に居合わせた面々も、コーラスでD’Artagnanのテンション上昇のサポートをしてくれます。「彼女が遠くから僕をちらっと見ただけで、もう僕はトランス状態に陥ってしまう!」と大袈裟なD’Artagnan(笑)。「楽園が存在することが分かったよ! その名はConstanceだ!」と最後までテンションの高い歌です。

Part 4に続きます。

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