Die Schöne und das Biest観劇記(2011年6月)

ドイツ東部の都市Magdeburg(マグデブルク)では、毎夏大聖堂前の広場DomplatzでDomplatzOpenAirと題した野外イベントが行われます。2011年6月17日から7月9日まで上演されたディズニー版”Die Schöne und das Biest”(美女と野獣)を、初日から4回観劇しました。

Die Schöne und das Biest
2011年6月17日21時公演

キャスト
Belle: Leah Delos Santos
Das Biest: Yngve Gasoy-Romdal
Maurice: Peter Wittig
Gaston: Alexander di Capri
Lefou: Bernd Julius Arends
Madame Pottine: Undine Dreißig
Tassilo: Maria Neumann
Lumière: Thomas Wißmann
Von Unruh: Markus Liske
Babette: Jenny Stark
Madame Kommode: Gabriele Stoppel-Bachmann
Monsieur D’Arque: Wolfgang Klose
Erzähler: Axel Strothmann

ディズニー版とわざわざ断ってありますが、同じ題材、タイトルでドイツオリジナル版が存在します。今回野獣役を演じたYngve Gasoy-Romdalは、ちょっとダークな雰囲気のドイツオリジナル版でも野獣を演じたことがあります。またディズニー版にもLeah Delos Santosと共に、Oberhausen(オーバーハウゼン)とBerlin(ベルリン)で出演しました。Belle役のLeah Delos Santosは、Uwe Krögerが野獣だったドイツ初演時のオリジナルキャストで、彼女の歌声はCDで聴くことが出来ます。大劇場のロングラン公演に出ていたキャストを野外劇場で楽しめるとは、なかなか贅沢な話です。Gaston役のAlexander di Capriは、Wien(ウィーン)の”Tanz der Vampire”でGraf von Krolockのセカンドを務めていました。Wienで4回も彼のKrolockを見た翌年に、Gastonで再会することになるとは(笑)。そのGastonの手下Lefouは、Stuttgart、Oberhausen、Berlinでも同役を演じたBernd Julius Arends。Lumière役のThomas Wißmannは、Oberhausenの”Wicked”(Dr. Dillamonth)と掛け持ちでの出演。他のメインキャストは殆どがTheater Magdeburgの座付き役者でした。オーケストラやコーラス、ダンサーもTheater Magdeburgからの出演。言ってみれば地方都市の劇場公演に、全国区のスターが数名ゲストで出演していたわけです。事前に出演者のプロフィールチェックはしていませんでしたが、力量の差は明らかでした。ただ座付きの役者さん達はMagdeburgの観客にはお馴染みの顔だからか、盛大な拍手を貰っていました。また観客もミュージカルファンというよりは、夏のイベントに家族連れで来ましたというゆるい雰囲気が大半だったので、オケがあまり上手くなくても、歌手の声とオケの演奏がずれることがしばしばあっても、楽しめればそれでいいかなという感じ。

LeahのBelleはもう完璧の一言! ドイツ初演時、欧州でアジア人がBelleを演じるというのは、そう簡単なことではなかったはずです。しかし彼女の演技を見れば誰もが納得することでしょう! 透明感のある美しい声、キュートな立ち居振る舞い、勇気ある態度、どこをとっても理想のBelleでした! Yngveの野獣は、Belleとの仲が近づいてくるにつれ、子供のようにはしゃぐ姿が可愛らしかったです。Belleとの食事の際、テーブルクロスの端で口を拭くなどのお行儀の悪さが「奇跡の人」のヘレン・ケラーのようで、観客の笑いを誘っていました。読書家のBelleを喜ばそうと図書室を見せる場面で、「サプラ~イズ!」と大声で叫んだものの、セットの本棚の扉がなかなか開かず、Belleが驚くまでに微妙に間が空いてしまったことが一度あり、こちらがハラハラしてしまいました(苦笑)。背が高く存在感のあるAlexander di Capriは、外見的にはGastonらしいGaston。ニタニタ笑いが妙にはまっていました。ただKrolockの時にも思ったのですが、役の解釈が型にはまった感じだったのが惜しかったです。

大聖堂の前に作られた回転式の舞台セットは、村と野獣の城が背中合わせになっています。メルヘンチックでなかなか可愛らしいセットでした。デザインをしたChristoph Weyersは、Fulda(フルダ)の”Die Päpstin”とDresden(ドレスデン)の”Passion”でも舞台美術を手がけています。図らずも今回の旅行で彼が舞台セットを手がけた3作品を観ることになりました。日没後は背後の大聖堂のシルエットが夜空に黒く浮かび、城のセットが実際の何倍も大きく見えたのは、Magdeburgならではの演出でした。

オーケストラボックスは舞台上手にありました。

大劇場並みの予算はなくても、城の住人達の個性的な衣装は細部まで凝っていて、ディズニーの楽しいイメージを上手く再現していました。天気が怪しい日は、Madame Pottine等の特殊系の衣装は、透明なビニールがかけられていました。また風が強かったので、Lumièreの両手から炎が上がる度にちょっと心配になりました(笑)。

客席は階段状になっているので、舞台は見やすかったですが、プラスチックの座席なので、クッションがないと痛いし冷えます。ホテル備え付けのクリーニング袋にタオルを入れた簡易クッションが、大変役に立ちました。屋根もないので雨対策は必須です。一度開演直前に雨が降り、舞台上の水たまりを掃除するために開演が遅れたことがありました。座席にも水が溜まり、観客に使い捨て雑巾が配られました。滞在中の天気は午前晴れ、昼曇り、夕方雨、夜曇りまたは時々小雨+強風。一日の間にめまぐるしく天気が変わるのが、この時期のドイツ。昼は暑くても夜は肌寒かったり、時には凍えそうな寒さに見舞われます。野外劇場での観劇では、ウールのカーディガンにフリース、マフラー、タイツかスパッツ、レインコート、膝掛けと荷物を入れるための大きな袋(地面が濡れていることもあるのでゴミ袋がお薦め)が必須アイテム。冬用の分厚いジャケットを抱えている人もよく見かけます。

初日はカーテンコールでポツッと来て、王子姿のYngveが手のひらを上に向けて、雨のジェスチャーをしていました。終演後にパーティーがあるとのことでしたが、要は終演後も売店が開いていて、休憩用のテントで深夜まで飲んでいてもいいということでした(笑)。ドイツやオーストリアからこの初日のためにやって来た友人達と飲んでいると、テント内にスタッフやキャスト等関係者が集まりだしました。輪の中心で主なスタッフやキャスト達が紹介され、初日が無事に開いたことをその場にいた全員でお祝いしました。アットホームな雰囲気も、野外劇場の魅力の一つです。

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