2012年11月の旅では、Wien版Elisabethが上演されているRaimund Theaterのバックステージツアーに参加しました。バックステージツアーは定員25名、参加費5 EURはMusicalclub会員だと3 EURになりますが、web予約の場合は割引を選べないようです。ツアーは基本的に木曜と土曜の16:15からと日曜の14:45から一時間程度。日程変更もありうるので詳細はWien Ticketのサイトで確認して下さい。二回公演の日は開催されません。
開始時刻になっても集合場所のRaimund Theater前にガイドが現れず、15分程外で待たされるハプニングから始まったツアー。担当者への連絡の手違いが原因だったらしく、急遽別の人間を手配するのに時間を要したとの説明がありました。コートや大きな荷物はクロークの台に置けます。無料ですが係員はいないので自己責任で。ガイドの女性がチケットを確認し、見学者用IDカードを渡してくれました。写真撮影は自由ですが、web上での公開は認められていません。
まずは正面入口からロビーを抜けて客席へ。着席してRaimund Theaterの歴史を聞きました。庶民の娯楽場として作られたRaimund Theaterには1. Rang(日本式の2階)の両脇にしかボックス席がありません。一般に開放していないこの席は、監督など関係者が上演中のチェック等に使っていたそうですが、客席として使うことも検討されているようです。Raimund TheaterはTheater an der Wienと比べて舞台の奥行きが4メートル短い分、装置の転換に制約があるため、初演版や再演版と同じ転換が出来ない部分があるとのことでした。説明の間もスタッフは夜の公演に向けてチェックに余念がありません。舞台奥には娼館の場面のセットが見え、照明や背景スクリーンのチェックが行われていました。
続いていよいよバックステージへ。衣装部屋を横目に見つつ、狭い通路を通って舞台袖の操作盤の前に集合。舞台を様々な角度から映し出すモニターを見ながら、ここでキューを出していきます。様々なタイミングが記入された分厚い台帳もありました。アクシデントの有無もこのモニター上で常に監視しているそうです。舞台の盤面が上下し角度が変わる悪夢の場面では、出演者の身体の一部が安全ラインを越えると装置が自動停止することになっています。とにかく事故が起こらないように細心の注意を払っていることが強調されていました。
舞台袖のちょっとしたスペースに、Lucheniの土産物等、お馴染みの小道具が置かれていました。その脇の小さな階段を下り、奈落に向かいます。金網でぐるっと取り囲まれたその先の暗闇に、複雑な舞台機構が見えます。分割され複雑な動きを見せる舞台の盤面は、実は本来の床の上に載せてあるセットだそうです。普段観客が見ている床はセットの上部に当たり、装置を乗せた通常の床部分は普段は奈落に納められています。金網越しの別の角度からは、ElisabethがDer Todと最初に会う場面と王宮の場面のベッド2台や、王家の巨大な紋章、カフェの場面の椅子やテーブル等が眼下に見えました。奈落の通路には壁際に白線が引かれ、その内側に岩壁のセットが点々と置かれていました。
奈落から再び階段を上がって舞台に戻ります。階段を上がった脇には棚があり、その足元に”Milch”(ミルク)の場面に登場するミルク缶が幾つも並べられていました。このミルク缶は本物で結構重量があり、取り扱いに気をつけないと怪我の恐れがあります。実際に2週間前に怪我人が出たとの説明もありました。棚にはラベルが貼られ、小道具を置く位置が正確に決められています。近くには傘立てに入ったステッキとバケツに立てられた女官達の黄色い傘もありました。
一行はステージ上に向かいます。背後を見ると、金網に貼られたラベルの下に首に縄を巻き付けたLucheniの人形がぶら下がっていました。舞台には新婚の皇帝夫妻に好奇の目を向ける人々のパネルが出ていました。舞台から客席の方を見ると、舞台際中央から左右に向かってゼロから始まる偶数が黒字で書かれている白い四角いプレートが見えます。このプレートは位置取りのためにあります。舞台から客席正面を見上げると、客席2階(1. Rang)中央に音響調整室が見えます。打楽器はオーケストラボックスには入らず、別室でオケの音を聴きながら演奏しています。打楽器とオケの音をミキシングし、丁度いい音量で客席に伝わるよう、この調整室で音のバランスを調整しているのです。
ガイドからは舞台上に引かれた赤線より客席側には行かないようにとの注意がありました。このラインは防火壁が降りる位置を示しています。火災等緊急時には、鋼鉄の防火壁が十数秒で降り、舞台または客席に被害が広がらないように食い止めます。見上げると例のやすりの装置の底面が輝いていました。Der TodやLucheniは命綱も何も着けずにこの装置の上で演技をします。かなりの高さがありますが、身体を支えるのは側面に張られた数本のロープのみ。
ステージ見学の次は再び舞台裏へ。狭い通路に面した女性用の衣装部屋は、ドア幅より少し広い程度の間口で、奥行きもそれほどはありません。その狭い空間の壁際と天井にびっしりとぶら下がった衣装を眺めながら、説明を聞きました。Raimund Theaterは狭いため、上演中の衣装替えはこの部屋で行うそう! 部屋に鏡はなく、ネームラベルが貼られた椅子が幾つか置かれ、その上には靴や小物が入ったバスケットがありました。衣装部屋のドアには場面毎の衣装の指示が色分けされたカラフルな表が貼られていました。
ガイドさん曰く、衣装替えが最も大変な場面は”Hass”(憎悪)だそう。3種類の衣装を重ね着し、行進しつつ小道具や衣装をチェンジするこの場面は、タイミングが少しでもずれると成立しません。勿論客席から見ていたときから凄いと思っていたものの、劇場側の人間となり、舞台裏を知って一層その大変さを実感したそうです。また歴史的な背景を知っているオーストリアの観客は、この場面の最後に拍手をしてはいけないと分かっていますが、何も知らない観客が拍手してしまうことがあるので、凄いと思ってもどうか拍手は控えて下さいと付け加えていました。
今回の再々演版から変更になった衣装デザイン、どうもガイドさんは気に入らないらしく、Mayerlingの場面でDer TodやTodesengel(死の天使)達が女装しているのには意味があったのに、それを止めてしまったのが理解出来ない、Todesengelが他の役としても舞台に出るようになったため、翼がない(全くないわけではないので、特定の場面を指していたのだと思いますがよく分かりませんでした)等、公式ツアーにもかかわらず忌憚のない意見を述べていました(笑)。劇場にも人員削減の波が押し寄せているそうで、14人いた衣装係が9人になり、更に6人にすることが検討されているそうです(メモを取っていなかったので数は間違ってるかもしれませんが、当初のほぼ半数になるようなドラスティックな削減数でした)。
続いては女性用メイク室へ。狭い部屋の両サイドに化粧台があり、その上や周りに棚には鬘がずらりと並べられており、それぞれに使用者の名前と役名のラベルが貼られています。一つの役柄に数種類の鬘があることもあり、更に同じ役でも鬘は俳優毎に用意されます。Elisabethの基本の鬘はロングや三つ編み、編み込み等3~4種類あり、それに冠状の三つ編み等のパーツをプラスすることで、変化をつけています。”Hass”の場面で使うお下げが付いた帽子が入っているバスケットもありました。帽子の内側には使用者のネームラベルが貼られていました。
移動の途中、舞台袖に先ほどの首に縄をつけたLucheni人形が、こちらに背を向けて回転椅子に座っているのが見えました。監督代わりでしょうか(笑)。最後は男性用の衣装部屋を見学。Todesengelの黒い翼が壁にコートのようにかけられており、足元には数種類のブーツが置かれていました。
ロビーに戻ると、グッズ売場やクロークの係員が準備を始めていました。時刻は既に18時近く。16:15開始の予定が15分遅れ、更に盛り沢山な説明で予定より大分押しての終了でした。ここまで遅くなることは通常はないと思いますが、時間通りにいかないのは欧州ではよくあること。観劇前に食事でもと考えている場合は、余裕をみておくことをお薦めします。
WienではVolksoperで「ヘンゼルとグレーテル」「ウィーン気質」「こうもり」を、
Burgkapelleで少年合唱団のNicholaimesse、
Konzerthausでウィーン交響楽団による大晦日の第九、
Musikverreinでシュトラウスなどのコンサート、
Staatsoperで「魔笛」(これが最後でした。最前列で観ました!)、
そしてミュージカルは「Elisabeth」と「Sister Act」を
観劇してきました。
主に昼は美術館や博物館を巡り、夜は音楽や舞台と
夢のような日々でした。
Elisabethはサイドブロック中央通路側を縦に2・3列目でとり、目の前に障害のない状態で観ることができました。
2幕の始めにはLucheniが目の前、唾が飛んでくるほどです。
Lucheniが客席からステージに上るのに、
一斉に最前列の人たちが立ち上がって道をあけたのには
ビックリしましたが、そうしなければ通れないぐらい
座席とオーケストラボックスの壁との間が狭かったです。
舞台に向かって右側のサイドブロックの目の前で
最後のElisabethとTodの場面が観れたのも感激でした。
先のコメントの続きです。
Wienから帰ってきて何度かコメントを送ろうとしたのですが、
うまくいかず、今、ようやくお送りできました。
AnnemiekeのElisabethは、特に若い頃は可愛らしく
きれいで、声の伸びがすばらしくて本当によかったです。
行きのLHの機内でドイツ版のCDを聴いたのですが、
ウィーン版CDや当日の方がずっと進歩しているように感じました。ドイツ版ではただ叫んでいる(とまで言うと言い過ぎですが)部分がある感じがしましたが、この日の彼女はずっとElisabethになりきっているように思いました。
まだまだ成長していくElisabethではないかと思います。
MarkのTodは、Mateファンの私にとっては、やはりMateの
セクシーさが何とも言えないのですが、声の伸びはすばらしく、
spaさんが言っておられた「体育会系」な感じは、
それほどしなかったです。とてもステキなTodだと感じました。
欲を言えば、「Elisabethを本当に愛している」感がもう少し強ければいいのになと思います。
Kurosch AbbasiのLucheniは一緒に行った友達が大絶賛!
彼女は高嶋ルケーニが気に入らないようで、「ルケーニはこうあるべきだ、こんなルケーニが観たかった」と言ってました。
主役を食おうとするような押しつけがましさはなく、
でも堂々たる存在感のあるルケーニでした。
私が初めて観てとても気に入ったのは、Franz Joseph役の
Franziskus Hartensteinです。spaさんが足が長いと強調されていましたが、それがけっして誇張でないことがよくわかりました。顔が小さくて背が高く、もちろん声もステキです。
残念ながらRudolfはAntonではなかったのですが、Oliver Arnoという人のRudolfもとてもよかったです。
層の厚さを改めて感じました。
SophieはDagmar Hellbergという人でしたが、この方は
これまでのイメージ通りの恰幅のいい方で、迫力がありました。
(実はあとでびっくりすることになるのですが)
観劇の前日と当日にホーフブルク王宮・シェーンブルン宮殿を
訪れてきたので、その映像が出てきてより感激も深かったです。
やはりWienのものをWienで観る良さは何物にも代え難いと
深く感じました。
Sister Actも大変楽しめました。
こちらはバックステージツアーにも参加できて、事前に
Ronacherの歴史についても説明してもらい、
衣装も観ることができたのでよかったです。
楽屋を見学しているときに、ちょうど鬘をつくる方がいらっしゃったので、その様子も少し見ることができておもしろかったです。鬘はほとんどが人毛で作られるそうですね。
この日は2階(簡単なBoxになっています)真っ正面最前列、
いわゆる「天皇席」での観劇で、舞台全体がよく見えました。
残念ながらDolorisはファーストのAna Milva Comesではなく、いつもはMichelleをやっているSidonie Smithという人だったのですが、とてもセカンドとは思えない迫力のある声とパワフルなダンスを見せてくれました。
それ以外(とMichelle)は全部ファーストの人でした。
Sisterたちがおもしろすぎます。ただ、ドイツ語の言葉遊びも入るので、げらげら笑っている人たちも多かったのですが、
半分ぐらいしか理解できませんでした。
もっとドイツ語を勉強しなければと思いました。
(これはオペレッタの「ウィーン気質」や「こうもり」でも痛感しました。)
そして驚きは、SophieをやっていたDagmar Hellbergが
この日は修道院長として登場!名前をみるまでは全然気づきませんでした。修道院長としての凛とした感じと、少しずつ変わってくる感じとがとてもよく表現されていてかっこよかったです。
この2つのミュージカルも本当ならリピートしたかったですが、
オペラやオペレッタ、コンサートもすばらしく、「音楽の都」Wienをたっぷり楽しんだ年末年始でした。
ずいぶん長く書いてしまって申し訳ありません。
spaさんのおかげでバックステージツアーにも参加できたし、
先にコメントも拝見し、CDも何度も聴いてしっかり予習していったので、何倍も楽しめた気がします。ありがとうございました。
Märzさん、素敵な旅行記ありがとうございました。旅行中は時間がなくて、お返事が遅れてすみませんでした。素晴らしく盛り沢山な日々だったのですね。『魔笛』を最前列観劇とは凄いですね! 以前友人がやはりStaatsoperで『魔笛』を観て、大興奮していたのを思い出しました。
"Elisabeth"もとても良い席でご覧になったのですね。そういえば確かにLucheniの登場時、最前列の人達が立っていました。Annemiekeは私もウィーンに移ってからの方がずっと良くなったと思います。買うならドイツ版CDよりもウィーン版の方がお薦めですね。MarkからElisabethへの愛がもう一つ感じられないというのは、私もですが複数の友人達も同じ感想を言っていました。そこは欠けていてはいけないポイントなので、Mark自身は素敵な役者さんだと思うのですが、Der Todとしてはついつい不満を感じてしまうのです。KuroschのLucheniはドイツツアー時よりずっと良かったと思いました。ご友人が素敵な体験を出来て良かったですね! Franz-JosephのFranziskusは友人達もばっちりはまってました。あの若さで老皇帝まで演じきるのが素晴らしいです! 素顔は素敵なお兄さんで、これまた好感度高かったです。Oliver ArnoのRudolfは、ツアーの方で観て私も気に入りました。彼はDer TodとRudolfを両方出来る人で、ウィーンでもごくたまにDer Todをやっているようです。Markの前にツアー版のDer Todを長く務めていました。一度彼のDer Todを観たいのですが、なかなか機会がなくて残念です。先日Ronacherでやっていたファントムのコンサート版では、Raoulを演じていました。
Dagmar Hellbergは私が観た"Sister Act"でも修道院長で出演していました。彼女は"Jekyll & Hyde"で娼館の女主人Nellieをやっていたので、正反対の役で観たのが個人的にツボでした(笑)。彼女の力強い声、当時から好きだったので久々に聴くことが出来て嬉しかったです。今度は"Elisabeth"で私も観てみたいです。"Sister Act"、殆どがファーストキャストだったということは、Patrick Stankeも出演していたのでしょうか? "Sister Act"の聞き取りは私も難しいと思いました。コメディーは雰囲気で楽しめますが、やはり細部が分かった方がもっともっと楽しめますよね。お互い頑張りましょう!
お返事ありがとうございます。
私が観たElisabethのキャストは、かなり「当たり」だったのですね。
本当にとてもよかったので、滞在中、2晩だけ
スケジュールが空いていた日にもう一度
観劇すればよかったと後悔しています。
ただ、そのぶん、友達としっかり飲んで
おしゃべりを楽しみましたが。
ウィーンではエステルハーズィーというお店がオススメです。
エステルハーズィー家はこの地の名門で、
Elisabethの侍女頭(というのでしょうか?)は
エステルハーズィーの方ですね。
DagmarさんのSophieは迫力があってよかったです。
今度は彼女の"Jekyll & Hyde"で娼館の女主人を観たいです。
ドイツ語の勉強、頑張ります!
Märzさん、観劇もワインとお喋りも楽しもうと思うと、時間がいくらあっても足りませんよね! Esterházykellerは私も良く行きます。夏は店の前の狭い空間にテラス席が出て、なかなか気持ちいいですよ。ここに行くと私もいつも"Elisabeth"の美容シーンを思い出します。