ドイツ・Fulda(フルダ)を拠点に活動する独立系ミュージカル制作会社Spotlight Musicalsの新作ミュージカル”Der Medicus“が、2016年6月17日から8月28日までSchlosstheater Fuldaで上演されます。2015年11月23日に行われた記者会見で、Friedrich Rau(主人公Rob Cole役)と『フランク・ワイルドホーン&フレンズ ジャパンツアー』(Frank Wildhorn & Friends Japan Tour)で2015年12月に来日するSabrina Weckerlin(サブリナ・ヴェッカリン、ヒロインMary Cullen役)の出演が発表されました。なおRob Cole役は負担が大きいため、ダブルキャストになる予定です。
“Der Medicus”の原作は米国の作家Noah Gordon(ノア・ゴードン)の小説”The Physician”(1986年発表)。11世紀のペルシア(今のイラン)が舞台の医療冒険小説は、ドイツでは800万部の大ベストセラーになりました。”Nordwand”(映画『アイガー北壁』)のPhilipp Stölzl(フィリップ・シュテルツル)が監督し、2013年12月にドイツで公開された映画版”Der Medicus”は350万人を動員し、翌2014年12月にテレビ放映されたロングバージョンは700万人が視聴しました。日本では2016年1月から映画『千年医師物語~ペルシアの彼方へ~』のタイトルで全国公開されることになっています。ドイツ語圏ミュージカルファンには嬉しい偶然、これで予習が出来ます!
小説の日本語訳は版元の角川書店では品切れ重版未定となっていますが、映画公開に合わせて再版されるのではないでしょうか。
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英語版3部作はキンドル版が入手可能です。
ミュージカル化にあたり、原作者Noah Gordonが映像コメントを寄せています。キャスト及び歌唱披露会見に登場したSpotlight MusicalsのCEOのPeter Scholz氏曰く、ミュージカル化の権利を取得するため、米国・Boston(ボストン)でGordon氏及びテレビ電話で参加した娘を含む一族郎党を前に6時間に渡ってコンセプトを説明し、信頼を獲得したそうです。英語はあまり得意ではないけれど、最終的には何とか上手くいった、ドキドキして忘れられない思い出になったと語るScholz氏。特別な才能を持った若者が困難な道を行くこの物語で主人公を演じるFriedrich Rauは、自分自身も石ころだらけの険しい道を楽しみにしているそうです。Spotlight Musicalsがこれまでに手がけた作品の多くに出演し、”Der Medicus”同様ベストセラー小説をミュージカル化した”Die Päpstin”(女教皇)では3年連続主役を務めたSabrina Weckerlinは、”Die Päpstin”と同様原作を読んだ人は皆これをどうやって舞台化するのかと思うだろうし、自分もわくわくしていると語っています。
Spotlight Musicalsのこれまでの作品を簡単にご紹介します。
“Bonifatius“(ボニファティウス)は8世紀にキリスト教布教に尽力し、志半ばで死を遂げたFuldaの聖人Bonifatiusの生涯を描いた作品です。再演を重ねたこの舞台、Bonifatius役はReinhard Brussmann及びEthan Freemanが演じました。Sabrinaも先住民の娘Alrun役で出演したことがあります。
“Elisabeth – Die Legende einer Heiligen“(エリザベート ある聖女の伝説)。13世紀にドイツ・Eisenach(アイゼナッハ)に実在し、死後聖女に列せられた領主の妃Elisabethを題材にしたミュージカル。Kunze & Levay作品の”Elisabeth”とは全く別物です。タイトルロールはSabrinaが演じています。信仰心に篤く、領内の貧しい人々に惜しげもなく物品を与えるElisabethを快く思わなかった義弟の告げ口により、Elisabethが領民に持っていこうとしていたパン籠の覆いを領主が取ると、中身がバラに変わっていたというエピソードは、”Rosenwunder”(薔薇の奇蹟)としてこの地方に語り伝えられています。私が初めてSabrinaを見たのはこの作品でした。
“Kolpings Traum“(コルピングの夢)。舞台は19世紀ドイツ、靴職人を経てカトリックの司祭になり、後に職人達の社会境遇を改善するためにコルピング職人組合を創設したAdolph Kolpingの物語。2015年9月19日にはKolpingの生誕150年を記念して、Köln(ケルン)のスタジアムで15,000人もの観客を前にコンサート形式の上演も行われました。主人公Adolph Kolpingを演じるのは”Elisabeth”ドイツツアー公演にKaiser Franz Joseph役で出演中のMaximilian Mann。SabrinaもKolpingの友人Karlの妻になるSusanne Beck役で出演しています。
“Friedrich – Mythos und Tragödie“(フリードリッヒ 神話と悲劇)は、プロイセン国王Friedrich der Große(フリードリッヒ大王)の青年時代を描いた作品。音楽と詩を愛する夢見る青年と厳格な父王との確執が悲劇を生みます。初演は2012年、2014年の再演の際にはSabrinaがFriedrichの姉Wilhelmine役で出演しています。
“Die Päpstin“(女教皇)はDonna Woolfolk Crossの歴史大河小説”Pope Joan”を原作とし、女性であることを隠して修道士からカトリックの最高位である教皇になったJohannaの波乱の物語。Sabrina Weckerlin主演でSpotlight Musicalsの作品中最も成功したタイトルです。Sabrinaの当たり役で彼女自身Johannaを演じることに非常に思い入れがあったそうです。
“Die Schatzinsel“(宝島)は、かの有名な冒険小説の作者で当時24歳のRobert Louis Stevenson(ロバート・ルイス・スティーヴンソン)と人妻Fanny Osbourneの恋愛ストーリーと、Stevensonが彼女の12歳の息子Lloydに語って聴かせた『宝島』のストーリーを二本の柱とし、虚実入り交じった構成になっています。”Der Medicus”の主人公を演じるFriedrich RauがStevenson役で出演しています。
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